危険物取扱者試験とは資格試験に合格した危険物を取り扱うことができるようになる国家資格です。
大きく分けると甲、乙、丙、の3種類がありますが各種類によって取り扱える危険物が異なります、
資格の種類と取得方法および難易度と試験の日程など概略をお伝えします。
筆者は甲種を1回で合格しましたのでちょっとした試験対策と合格のコツを加えておきます。
特に乙4を受ける高校生へちょっとしたアドバイスができれば幸いです。
資格または検定試験名(正式名称と通称)
危険物取扱者(試験):(通称)危険物乙4 など(国家資格)
危険物と定められている物質をあつかう場合、
法で定める指定数量以上を貯蔵し又は取扱う施設(製造所等)において使用する場合には危険物取扱者免状が必要です。
\(\large{\color{green}{\fbox{丙種}}}\)
ガソリン、灯油、軽油、重油などが取り扱いできるようになります。
\(\large{\color{orange}{\fbox{乙種}}}\)
第1類から第6類まで資格取得したそれぞれの類の危険物が取り扱えるようになります。
\(\large{\color{red}{\fbox{甲種}}}\)
第1類から第6まですべての指定危険物を取り扱えるようになります。
受験資格
\(\color{green}{\fbox{丙種}}\) 受験資格はありません。誰でも受験できます。
\(\color{orange}{\fbox{乙種}}\) 受験資格はありません。誰でも受験できます。
\(\color{red}{\fbox{甲種}}\) 甲種危険物取扱者試験を受験する場合は、一定の資格が必要です。
※
(甲種受験資格)下記のいずれかがあれば危険物甲種が受験できます。
- 大学等において化学に関する学科等を修めて卒業した者
大学、短期大学、高等専門学校、専修学校、高等学校の専攻科、中等教育学校の専攻科、防衛大学校、職業能力開発総合大学校、職業能力開発大学校、職業能力開発短期大学校、外国に所在する大学等 - 大学等において化学に関する授業科目を15単位以上修得した者
大学、短期大学、高等専門学校(高等専門学校にあっては専門科目に限る)、大学院、専修学校
大学、短期大学、高等専門学校の専攻科
防衛大学校、防衛医科大学校、水産大学校、海上保安大学校、気象大学校、職業能力開発総合大学校、職業能力開発大学校、職業能力開発短期大学校、外国に所在する大学等 - 乙種危険物取扱者免状を有する者
乙種危険物取扱者免状の交付を受けた後、危険物製造所等における危険物取扱いの実務経験が2年以上の者
次の4種類以上の乙種危険物取扱者免状の交付を受けている者
〇第1類又は第6類 〇第2類又は第4類 〇第3類 〇第5類 - 修士・博士の学位を有する者
修士、博士の学位を授与された者で、化学に関する事項を専攻したもの(外国の同学位も含む。)
試験内容と受験対策方法
試験内容
\(\color{green}{\fbox{丙種}}\)
- 危険物に関する法令
問題数:\(10\,問\) - 燃焼及び消火に関する基礎知識
問題数:\(5\,問\) - 危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法
問題数:\(10\,問\)
試験方式:四択(マークシート方式)
試験時間:\(75\,分\)
合格基準:試験科目ごとの成績が、それぞれ \(60\,%以上\)
※
全体で60%以上ではありません。
「危険物に関する法令」
「燃焼及び消火に関する基礎知識」
「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」
それぞれで \(60\,%以上\)が合格基準です。
\(\color{orange}{\fbox{乙種}}\)
- 危険物に関する法令
問題数:\(15\,問\) - 基礎的な物理学及び基礎的な化学
問題数:\(10\,問\) - 危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法
問題数:\(10\,問\)
試験方式:五択(マークシート方式)
試験時間:\(120\,分\)
合格基準:試験科目ごとの成績が、それぞれ \(60\,%以上\)
※
全体で60%以上ではありません。
「危険物に関する法令」
「基礎的な物理学及び基礎的な化学」
「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」
それぞれで \(60\,%以上\)が合格基準です。
\(\color{red}{\fbox{甲種}}\)
- 危険物に関する法令
問題数:\(15\,問\) - 物理学及び化学
問題数:\(10\,問\) - 危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法
問題数:\(20\,問\)
試験方式:五択(マークシート方式)
試験時間:\(150\,分\)
合格基準:試験科目ごとの成績が、それぞれ \(60\,%以上\)
※
全体で \(60\,%\)以上ではありません。
「危険物に関する法令」
「物理学及び化学」
「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」
それぞれで \(60\,%以上\)が合格基準です。
試験科目免除制度
一部免除 :
乙種危険物取扱者試験において次に該当する方は、試験科目の一部が免除されます。
- 乙種危険物取扱者免状を有する者
例えば、乙4の免状を持っている人が乙1類を受験する場合などです。
全類で「危険物に関する法令」「基礎的な物理学及び基礎的な化学」は全問免除されます。
受験する類の「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」問題数:10問のみを受験することになります。
免除されて受験する場合、試験時間は35分です。 - 火薬類免状を有する者
乙1類と5類を受験する際に、
「基礎的な物理学及び基礎的な化学」「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」で一部免除されます。
免除されて受験する場合の試験時間は90分です。 - 乙種危険物取扱者免状を有し、かつ火薬類免状を有する科目免除申請者
乙1類と5類を受験する際に、
「危険物に関する法令」「基礎的な物理学及び基礎的な化学」は全問免除されます。
免除されて受験する場合の試験時間は35分です。
・丙種危険物取扱者において、
5年以上消防団員として勤務し、かつ、消防学校の教育訓練のうち基礎教育又は専科教育の警防科を修了した人は、
「燃焼及び消火に関する基礎知識」が全問免除されます。
「危険物に関する法令」:\(10\,問\)
「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」:\(10\,問\)
について受験します。その場合の試験時間は60分です。
対策方法
テキスト・参考書での独学
各地区の消防署が講習会を行ってくれる場合もあります。
全くはじめての受験であれば法令の理解を助けてくれるでしょう。
甲種短時間合格へのコツ
※
あくまで個人的な方法ですので確実とは言えません。
参考にとどめ、ご自身の責任において対策はして下さい。
筆者の場合、
受験まで2カ月(対策は1カ月)だったこと、
(普通の人よりは余裕がある方かもしれません。)
昼間は仕事をしながらの対策でもあったので、
1つひとつていねいに学ぶには時間が足りないような気がしていました。
そこで勉強のしかたを工夫するしかなく、
合格だけを目標にした対策としました。
先ずどのようなことを問われるのか過去問を見てみました。
法規については1からですが常識的に判断すれば数値的な要素を記憶し、問題慣れすれば大丈夫と判断。
大学を専門で卒業した(甲種受験資格を持っているので当然ですが)ので物理と化学については一通り概要を読めばおおよその感覚はつかめました。
後は乙1類から6類までの各危険物についてです。
これはすべてを細かくやれば切りがありません。
そこで、すべての科目において解説書を1から勉強することは避けました。
これは、最終的にどれだけ時間がかかり、どこまで終わらせることができるかわからなかったからです。
問題集を2冊用意して、とにかく問題慣れ、
そこから始めて、弱いと思われるところを解説を細かく読む、という単純な対策です。
実際にはほとんど1冊しか使っていませんが、
1冊目が「当たり」の問題集だったのでラッキーだったのでしょう。
問題集1冊でも解説の詳しいものなら可能性はあるでしょうが、
可能性を高めるために2冊はやっておいた方が良いかもしれません。
解説書の様な参考書は辞書代わりにはなりますが、
試験対策を期間設定された場合、合格へは遠回りです。
真面目に、細部にわたって勉強するに良いかもしれませんが、
筆者の様な合格目標の人にはムダが多くなります。
合格してからでも知識を補うことはできます。
先ずは、自分に合った勉強法を選び、合格を手にして下さい。
最初に乙4類を受験する高校生へアドバイス
工業高校だと学校単位で受験することもあるでしょう。
物理基礎、化学基礎もまともに学んでいない状態では厳しいところもあるかもしれません。
学校で勉強するような方法はしなくて良いです。
先ずは過去数回分くらい問題と答(解説)をみてください。
解けなくて当たり前ですが、何となく聞かれることに共通することが見えてきます。
そして、回数をこなすごとに正答率が上がります。
後は、解説書(テキスト)は辞書としておいといて、
問題集を解いて行きましょう。
学校の先生が言う勉強方法は真面目すぎます。
それほど対策に時間のかかる試験ではありませんので、
とにかく多くの問題を解いてください。
ある程度数値を覚えて、問題が解けるようになれば、
弱い科目を集中して問題を解きましょう。
いいですか?
60%で良いのです。
1つの科目が正答率90%、でも物理、化学が正答率40%だと不合格です。
1つの科目が7,8割以上とれると思えば、違う科目の対策をするのですよ。
満点は必要無いのです。
乙4を合格すれば後は受験科目が1つで次の類が受験できます。
必要なら受ければ良いし、必要無ければ乙4だけでもいいでしょう。
それと危険物に関する法令は大学を出ていても土台は同じです。
何もわからない状況からの試験対策です。
例えば問題の中に指定数量の倍数計算があるのを知ってますか?
物質によって(引火しやすさによって)指定数量は決まっています。
ジエチルエーテルの指定数量は \(50\ell\)
ガソリンの指定数量は \(200\,\ell\)
灯油の指定数量は \(1,000\,\ell\)
軽油の指定数量は \(1,000\,\ell\)
重油の指定数量は \(2,000\,\ell\)
などです。
こんな数字はこの試験勉強で初めて知りました。笑
ただただ覚えるしかない数量です。
指定数量で分けると8種類ですが、どの物質がどの指定数量かを覚えなくてはなりません。
品名は「特殊引火物」「第一石油類」などと別れ、ガソリンや灯油がどの品名に属するかも覚えなくてはなりません。
ここだけでみるとかなりの情報量で『覚えきれない』とあきらめなくて良いです。
よく耳にするガソリンや灯油、重油などを覚えきれるものから、覚えるようにすると良いです。
ちなみに、指定数量の倍数とは、
同一場所に貯蔵する危険物の合計が指定数量の何倍になるか?
ということなので、各物質の指定数量の倍数の和(足し算)になります。
例
灯油 \(18\,\ell\)入りの缶 \(1,000缶\)
軽油 \(18\,\ell\)入りの缶 \(2,000缶\)
重油 \(200\,\ell\)入りのドラム缶 \(1,000本\)
ガソリン \(200\,\ell\)入りのドラム缶 \(500本\)
を同じ場所に貯蔵したとき、指定数量の何倍か?
この四種類の指定数量は覚えておいた方が良いです。
よく出てくるし、よく耳にするでしょう?
身近に多く存在しているからで、よくあつかうことになるからです。
もう一度みておくと「指定数量」は、
灯油 \(\color{magenta}{1,000}\,\ell\)
軽油 \(\color{magenta}{1,000}\,\ell\)
重油 \(\color{blue}{2,000}\,\ell\)
ガソリン \(\color{red}{200}\,\ell\)
なので
灯油 \(18\,\ell\)入りの缶 \(1,000缶\) は
\(18\times 1000=18,000(\ell)\)
倍数は
\(\displaystyle \frac{18000}{\color{magenta}{1000}}=\)\(\color{black}{\fbox{18}}\)
軽油 \(18\,\ell\)入りの缶 \(2,000缶\) は
\(18\times 2000=36000(\ell)\)
倍数は
\(\displaystyle \frac{36000}{\color{magenta}{1000}}=\)\(\color{black}{\fbox{36}}\)
重油 \(200\,\ell\)入りのドラム缶 \(1,000本\) は
\(200\times 1000=200000(\ell)\)
倍数は
\(\displaystyle \frac{200000}{\color{blue}{2000}}=\)\(\color{black}{\fbox{100}}\)
ガソリン \(200\,\ell\)入りのドラム缶 \(500本\) は
\(200\times 500=100000(\ell)\)
倍数は
\(\displaystyle \frac{100000}{\color{red}{200}}=\)\(\color{black}{\fbox{500}}\)
これらの和が指定数量の倍数になるので
\(18+36+100+500=654\)(倍)
となるのですが、
指定数量の小さいガソリンから倍数を計算すればある程度回答がしぼりこめたりします。笑
こういった要点をしっかり覚えたければ何かしらの講座を受けた方が良いかもしれませんね。
自力で頑張るのも良いですけど、最初の1つを合格すれば後は楽になるので、人の力を借りても良いかもしれませんよ。
試験頻度および日時や時期
受験を決めてからでも数ヶ月程度あれば受験できるくらい頻繁に行われています。
比較的回数の少ない甲種でも2カ月に1回程度は行われる都道府県があります。
特に乙4は回数が多いです。
危険物取扱者試験は、都道府県ごとに行われており、
年度途中で試験日程等の変更もありますので、
詳細は受験を予定している都道府県の各支部にお問い合わせください。
試験会場
全国各地(高校生だけが受験できる高校が受験会場になることもあります。)
受験料
条例による受験料の変更にご注意ください。
\(\color{green}{\fbox{丙種}}\):\(3,600\,円\)
\(\color{orange}{\fbox{乙種}}\):\(4,500\,円\)
\(\color{red}{\fbox{甲種}}\):\(6,500\,円\)
過去数年の平均合格率または難易度
\(\color{green}{\fbox{丙種}}\)
合格率(合格者/受験者):およそ50%
\(\color{orange}{\fbox{乙種}}\)
乙4合格率:30%前後
(最初に受験するのが乙4という高校生が多いために合格率が著しく低いと思われる。)
乙(他)合格率:60%~70%
\(\color{red}{\fbox{甲種}}\)
合格率:35%前後
主催・試験実施団体
名称:一般財団法人 消防試験研究センター
本部住所:千代田区霞が関1-4-2大同生命霞が関ビル19階
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